MDP(merchandise presentation)とは、
商品陳列そのものと美観配置の手法、それによる展開統制であり、VMDの一領域です。
「商品陳列そのもの」の話ですから、店舗の基本的「人格」「性格」や「健康状態」も表れます。
2DISPLAYはMDPを軸としたコンサルティングを得意としています。
自由度の高いハイセンスなマーチャンダイジングとストアプランニングが数多出ている現代、一見前時代的で古臭い内容のMDPは見落とされがち、軽んじられがちな傾向にありますが、演出や装飾的な味付けで華々しいディスプレイを行ったり、自由度の高い店舗設計を行うにしても、企業や店舗における「VMD構築の全体観」の中においては、店舗設計・店舗運営の双方においてバックグラウンドに「MDPに基づく意図と意思のある計画と統制」があることが望まれます。それが、最初に決めた店舗の性格や健康状態をぶらさずに維持し、商品陳列自体を"ビジュアルイメージ"にまで高めるヒケツだからです。
ところが、これを維持するのが難しい。
最初に決めた店舗の性格や健康状態は、経営者や店長が変われば、品揃方針が変われば、折々の方針変更と判断によりどんどん変質し、曲がっていき、当初のコンセプトとずれ、別の人格になります。
店舗の計画を、コンセプトや品揃え方針から店舗設計・VMDまで"ビジュアルイメージ"を司るワンディレクターが行い、開店後のメンテにも主体的に関与し続ける場合はその限りではありませんが難しいですよね・・・
もちろん方針変更や修正がダメなわけではありません。店舗や売場の性格や健康状態も頭に入れて修正すれば良い話で、修正時もMDPの実践項目に沿ったフィルターを通せば良いのです。
もともとの姿を喪失した別人、正体不明の状態になるとお客様は気づいて離れていきます・・・
さて、MDPの実践項目とはいったいどのようなものでしょうか・・・
2DISPLAYは代表のこれまでの実務経験と研究から、MDPの体系を下記のように独自に捉えています。
MDPの体系は、
によって構成されます。手法として2を整えるのが1という関係になります。
上記の融合により、陳列の全体調和と美意識を導き「美的な快感」を呼び起こすことが重要です。
左は売られているデフォルトのパッケージ状態、中は使っていて混ざるとこんな状態、右は明るい黄色から初めて色相環を元に並べた状態。
どれが一番好きですか?気持ちがいいですか? 色の並べ方で印象が全く異なります。
デフォルトはパッケージ中央に黄を中心とした明るい色相が配置され暗い色が両端に配置されることで、店頭陳列時に目が中央に留まる(=商品名にも目が行く)ようになっていると思われます。このように意図があればよく絶対の正解はありません。無策で違和感のある色の並べ方になってはいませんか?? 並べる場所は並べ方、商品特性によっても変わりますが一般的には右のような並べ方が基本となります。
VMDのなかでも商品陳列そのものにまつわる一領域であるMDPという領域で捉えて解説していますが、②にあたる実践項目はいずれも、視覚的効果を狙う場づくりや手法により視覚化を行うとはいえその計画の前提として「行動学」「認知心理学」「人間工学」といった人の動き方やモノの見方、人の物理的構造と動き方を意識して計画するものです。①は「構成学」「色彩学」や、視覚を中心に五感全体での「知覚心理学」の問題と捉えれば理解しやすいでしょう。
人(お客様)の動き方や視覚に入るものの認知の仕方、認知したものに対する動き易さを購買行動のとりやすさとして売場設計に組み込み、いやでも認知しやすい場を一等地として発信の場にしたり、単位や範囲を括って把握しようとする人間の性質を巧みに利用するのです。人間の行動の性質を巧みに利用して場をつくり、その場での視覚への訴え掛けには美観やテーマを伴わせるわけです。人間の行動や認知の性質として把握しやすい動きやすい陳列をすれば、無意識に「見やすいな」「買いやすいな」と思っていただけます。多くのものの中から探しやすく並べるのが陳列ですから、とても理にかなっています。
内装設計をされるデザイナーは、今話題の「デザイン思考」のように求められる課題解決をデザインという過程を用いて考えるばかりでなく、独創性に富んだ個々の創造物として実際の内装で具体化していきますが、上記のような人の行動や認知、人間工学的な観点をも売場設計にごく自然に反映します。ところが、それらが理想的に反映された図面は「スカスカ」「物量がすくなそう」「もっと置けそう」と思われることが多く、依頼主側がこれらの側面の重要性を理解していない場合も多いので注意が必要(特にオープンした後!)です。
わざと目線を遮るような壁や造作、什器を入れることも多いですが、そこには「裏に何かあると感じさせワクワクさせる」「場面やストーリーの切替を意識させる」「包み込みと没入感を醸成する」といった巧妙なコンセプト、計画が潜んでいます。それに合わせマーチャンダイジングと陳列、トータルのVMDも巧妙に仕掛ける必要があります。
また、「市場っぽい」とか「宝探し感のある」といった整理のない状態が素敵な場として存在します。素敵な「整理のない」状態は、一見そう思えても実は全体には何らか共通のテイストがかかっていて場全体に統一感と一体感のある場合が多いので、知覚の観点では大変な没入感があり快感が生まれるのです。テイストもなく没入感もなくただ無秩序になると雑然としてしまいます。何事もメリハリ。中途半端が一番いけません。
②の項目については、すべて「目的」別で括ることができます。
・・・・・にはいくつかの学ぶべき項目が入ります。
なぜ学ぶべきか。
すべて、お客様を主語にした考え方で「お客様のため」を目的にしているからです。
お客様は人間ですから、人間工学や心理学をもって巧みに展開に惹きつける魔法を用いてお買物をしていただいているのです。それがVMDの真骨頂。お客様のことを考え、その上で魔法をかける。
お客様のために取組むことが企業・店舗・売場のためになるのです。
皆さんよくご存じのVP・PP・IPはどれにあたりますか?
見やすく探しやすく買いやすくするために何が重要ですか?
このように「目的別」に実践項目を捉えたことがありますか?
目的別に捉えると、店頭におけるMDPの存在意義・価値が明確化され指導がし易くなります。
弊社の考えるMDPの体系(2つのカテゴリ)に通底する3つのヒケツは・・・
です。
清潔とワクワクは当たり前の話ですが、現実的には最も難しくハードルの高い話題だったりします。
「陳列=①括り②配置 の2段階」ですが、これは弊社代表が「20数年の企業VMD実務を通して何を学び見出したのか一言でまとめよ」を自ら問うたときに迷いなく出てきたワンフレーズです。振り返れば、何をするにしても常にこれを意識して取り組んできました。
商品陳列のみならず、すべての「意図をして配置する」活動に対し当てはめられると考えます。
「括りと配置」を意識する。
例えば、下記のような小売で重要な計画はすべて「括り」=セグメントをした上でグルーピングが行われているはずです。
出店計画(地域で括り、商圏で括り、出店地を選び、店を配置する)
顧客セグメント(年齢で括り、性別で括り、年収で括り、購買額で括り・・)
属性セグメント(テイストで括り、マインドで括り、趣味で括り、用途で括り、役割で括り・・)
季節区分(毎年の動向にアジャストさせシーズン括りに対し適切な販売期間の配置と量の発注を行い・・)
これと同じように、MDPに関しても主要な実践項目はすべて「括り」が重要になります。
そして、グルーピングして括った「分類」をどう関連付けて「配置」するか、括りと配置をお客様を想像しながらいかに意図を意思を持って創り出すかが重要です。
そして①「陳列構成によって美観と統一性を創り出す・・・」は、
括って配置した個々のグルーピングを、そうわかるように視覚的に強調したり、グルーピングの強弱や優先度を視覚的につけたり、インパクトを持たせたりするのにも役立ちます。まさに「括りと配置」の集大成かつ根本原理、テクニカルかつベーシックな話になります。
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