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照明で景色を創る

 

早いもので2024年も折り返しに入ってしまいました・・・

連日酷暑が続いております皆様いかがお過ごしでしょうか。

 

寝ている間も冷房入れていないと熱中症になるし。昔の夏みたいに午前中だけでも涼しいといいんですがね・・・

 

 

あ、大福ちゃん。こんちは。日陰も暑いね。

 


 

大学の講師をやるようになって5年目になりましたが、毎年VMDのお仕事に関心を持ってくれて私に話を聞きにくる学生がいます。本当に関心の高い人には、弊社でのインターンシップ活動の位置づけで現場やショールーム、視察などにお連れしています。これまで3人ほど受け入れました。

 

一昨年受け入れた学生さん、VMD業界を目指して就活を展開しましたが、最終的に照明業界に就職されました。業界は違えど根っこで繋がっておりVMDとは切っても切れないのが照明業界です。良いところに就職したね!展示会をするときには絶対に僕を招待してね! という約束を交わしたのでした。

そして先月、彼女からメールが来ました。

 

なんとショールームにご招待頂けると!!

 

嬉しい!!本当に嬉しい!! 

 

ということで、今回は株式会社モデュレックス様の素晴らしいショールームを皆様にもご紹介したいと思います。

 


 

2016年にマレーシアのクアラルンプールでの「ISETAN The Japan Store Kuala Lumpur」オープンの際に、現地の打ち上げでモデュレックス社現副社長の菅さんとお名刺交換させて頂いたのですが、なんと今回のショールーム訪問で菅さんと再会、ご同行も頂き、直々にとても詳しくご説明をお伺いすることができました。

 

また、照明デザイン部門の新入社員3名もご同席くださり、VMDについてのお話をさせて頂く機会も頂いてとても有意義な情報交換会となりました。

 

恵比寿のグローバル本社に着きますと、皆様のお出迎えを頂きました。

そして、見どころは本社入口から始まるのです。

 

 

隈研吾さんにデザインよるグローバル本社は、モデュレックスが目指す「光の情感」を体感できる拠点としての機能を持つそうです。

このエントランスホールでその意味合いを知ることが出来ます。

 

 

光の情感・・・

自然光がたっぷり差し込むガラス張りのホールには木、緑、石、布といったシンプルな素材。シンプルな素材だからこそ判る自然光と人工光の違いとそれぞれの良さ、素材に対し働きかける視覚的な印象の違いを、自然光と人工光のミックスの具合で体感することができます。

 

 

自然光だけだと陰が強かったり青みがかったり。そこに人口光をミックスすることで陰影や色味の視覚的印象のバランスをとる。素材自体の見え方も変わってきます。その日の天気や時間帯によっても適切なバランスでミックスを変えていくことができますね。

      


 

照明はいまやLEDが主流ですが、ホールで体感したような光の最適化による光のデザイン「照明環境事業」、これを空調、セキュリティ、床暖房などの設備と人の動きを感知することで連動させて、エネルギー削減を行ったり、照度を快適にコントロール、色温度と合わせて空調温度を変える連携を行う「環境制御システムインテグレーション事業」、目で見て美しい照明器具や意匠器具だけでなく照明でカバーする範囲を映像音響や香などでもカバーすることで情感の創出や体験価値を生み出す「エクスペリエンスデザイン事業」、エネルギーとしての最適化やエネルギー診断、補助金申請なども含む幅広いコンサルを行う「エネルギーソリューション事業」を事業の4本柱とし、それぞれを掛け算することで「総合環境ソリューション」を展開しているとのこと。

照明というものやその関連業務がカバーする範囲、照明のデザイン領域自体がもの凄く広がってきているとのお話でしたが、なるほど納得。

      

 

そんな活動領域の広がりに対応するため、既存の枠にとらわれることのない柔軟な発想を生むことや五感のアンテナを張ることを目的としいているのでしょう、オフィスフロアは図書館となっていて、クリエイティブで自由なムードに包まれています。こんなオフィスで働けるなんて羨ましい・・・

 

昔むかし宣伝部に配属されたとき、事務所(オフィスというより事務所というコトバが似合う)にカラーコピー機があっただけで「ここに配属されてよかった!」と思ったものですが(笑) 働く環境って発想や柔軟性に絶対影響与えますよね。

 

巨大な本棚の中の選書は編集工学研究所長・松岡正剛さんによるものだそうですが、ホント、あらゆるジャンルがありました。普通なら雑然とした倉庫になりそうなスペースにも本棚。文庫の充実に驚きましたが、Newton別冊の超ひも理論の本があったのが個人的にグッときました・・・

 

 

このオフィスでは定期的にミュージシャンのリサイタルを開いたりしているそうです。この図書館オフィスにはそういった照明設備や演出設備が備わっているということですし、こういったマインドでクライアント企業の依頼に対して照明デザイン以上の価値創造をしていっているということでしょう。

 


 

光の絵筆

菅副社長はそう表現しておられましたが、これを目の前で体感してきました。

照明器具から照射される光の、絵筆としてのデザイン性や機能性の差を見ることができるライティングモデュレーションルーム。

 

 

シンプルなホワイトキューブ空間に、投影装置と高さ可変の天井と照明器具、操作卓。照明効果を見るためのシンプルなソファ。

 

照明、特に店舗照明については専門知識まではないものの、凡その分類、種類や役割は理解しているつもり。そのうえで、ここで目の当たりにする器具ごとの照明効果の違いや、モデュレックス社製品の特長といったことは、照明とVMDの土俵・・視覚に与える印象そのものの精度向上や制御といった観点ではその土俵がまったく同じであることを再認識させられます。

 

 

一灯の器具(ダウンライト系)の違いで、光の広がり方の差と妙を創り出す。

明るさや広がりを損なうことなく灯数を少なくする。

いかに壁面を均一に明るく均整度を上げる。

天井高3mからの照射で幅3.4mと1:1以上に光を広げる。

光の周辺のグラデーションの美しさに拘る。

照明器具自体が天井で光を反射しないようにする。

 

このあたりの製品開発にかける矜持がスゴイ。

 

そして照明器具は「絵筆」ですから、見えてくる「絵」のタッチが変わります。

 

この、入角に負けずに壁一面を均一に照らすウォールウォッシャーがスゴイ!
この、入角に負けずに壁一面を均一に照らすウォールウォッシャーがスゴイ!

 

ボディに対する照明効果も見せて頂きました。

 

 

左と右で当てている照明器具の種類が違い、ドレスの赤の色味も違って見えます。後ろの壁を明るくすることなく、ピンポイントでキレよく光を当てているのが判ります。光の漏れる量を制御する技術の高さだそうです。

 


 

照明の視覚的表現に対する効果はとても奥の深いもので、カバー領域の拡大に伴って技術も進歩し続けているんですね。店舗において照明は当たり前すぎて空気のような存在ですが、VMDは照明が灯った瞬間に完成するもの。照明なくして店舗は絶対に成り立たないし、VMDも照明なくして絶対に成り立ちません。

 

私はVMDセミナーの際、VMDを「風景」「風景画」になぞらえて一瞬の視覚的印象創りの重要性をお話させて頂くのですが、照明とそのデザインもまた記憶に残る風景の表情そのものであり、VMDと同様に店舗の特徴を照らし出すものだと思います。

 

景色を創るという点で、照明とVMDは根っこが同じで繋がっています。

 

今回私をグローバル本社に招いてくれた教え子。彼女は私の授業を受けていたとき、マネキンメーカーさんの展示会見学を募ったところ手を挙げて参加してくれました。そこで目の当たりにした初めて見る光景(マネキンを用いた独創的幻想的な演出や世界観表現)に圧倒されたのでしょう、その日以来VMD業界を強く志望して就活を展開してきました。でも、最終的に自分自身で選んで勝ち取ったのは照明業界の雄でした。

 

私には解ります。

照明業界とVMD業界は根っこが同じで繋がっているから。VMDを引き立てて特徴を照らし出すのが照明だから。

それを教えてもらいました。

 

大学で身に付けた実践的なビジネスノウハウと前向きな姿勢で、新しい照明事業を拡大していってほしいと思います。その先にVMDの新しい魅力も開けますからね!

 

応援しています。