また一つ、前職の店舗が閉店・・・
2/28に閉店とのことで、地域密着型店舗最後の勇姿を見に行ってきました。
恵比寿三越が恵比寿ガーデンプレイスの核店舗としてオープンしたのは1994年だそう。百貨店としては短い26年の営業期間。なんとなく大学生の頃にオープンしてサークルの連中と見に行った記憶がありましたが、私は伊勢丹91年入社なので記憶違い・・ 94年当時は宣伝部でしたが、宣伝部の若手数人で視察に行ったんでした。
そうそう。初めてYGPを訪れた時も、目の前に広がるこのノスタルジックな欧風の景観、美しい建築物に「おおおお・・・」と唸った。
正面右手にレンガ色の特徴的なエントランスステーションとビアレストラン、左手にはお洒落なベーカリーがあったかな。
中央には地階へと下がるスロープ状のプロムナード、中ほどから天井にグリーンの大きなアーチ。素敵な植栽。正面奥には協会のような建物。これがジョエル・ロブションだと知ったのは随分後の話・・・
このランドスケープの完成度!
当時、訪れている人ほぼ全員がここで記念写真を撮っていたものです。
コロナさえなければ今もそう変わらなかったでしょうか。
プロムナードを下った先の広場では青空マルシェやイベントをいつもやっていましたが、なんと言ってもクリスマスイルミネーションが綺麗でしたね。
ランドスケープとして広場やアーチなどと完全に融合している三越やガーデンタワー下層。空が大きく抜けて広がっている。
そもそも私は恵比寿という街にはそれまで全く縁がなく、大学は渋谷だったので池袋・新宿・渋谷はそこそこ動いていましたが、恵比寿・目黒からその先は殆ど関心もなく未踏の地でした。恵比寿にエビスビールがあることすら知らなかったんで(笑) だからとても新鮮でした。
しかも、駅の改札を出てから遠い!
スカイウォークの動く歩道の上を早足で歩いて、ワクワクしつつまだかまだか!と。スカイウォークは往復の人で埋め尽くされていました。サンシャイン60のオープンの頃を思い出しましたね(古!)
そして、スカイウォークが終わって突然目の前に広がった光景が最初の写真のような感じ・・ スケールの大きさ、非日常でした。
基本的に、今現在も恵比寿の街の印象って自分の中ではYGP+ウェスティンの印象で、駅のアトレの印象でもビアホールの印象でも周辺のお洒落な店舗や飲食店の印象でもありません。三越の印象は完全にYGPと一体化していて、YGPに行っても三越には行かないことも多かったので、実はほとんど個人的に思い入れがないお店でした。
バブル崩壊と重なったもののYGPオープン時はとにかく華やかでお洒落な人が多く(今でもお洒落な地域住民の方がたくさんおられますが)人であふれていましたが、その賑わいはその後も景気に左右され続けて変わってしまいましたね。
これが恵比寿三越。
2017年にリモデル時に外装をメンテしたのでとても綺麗な状態。
1994年オープン時は「くらしの館」をコンセプトにしていたそうで、今でもその軸はブレていません。日本の標準的百貨店とはまるで違う、ガラス壁の多用や採光の多さ、ライフスタイルMDの多さにワクワクしたのを憶えていますが、B1Fアーチ下センター広場玄関からエビスビール記念館に伸びる広いプロムナードは美術館の回廊みたい。その上層にあたる1Fから2Fに吹き抜けている明るく高い空間に「さすが最新店舗!!」と唸ったものです。
オープン当時の様子で記憶しているのはこれくらいですが(笑)、三越伊勢丹統合後に訪れた際に、この素敵な空間の記憶が「置ける空間には什器を置いてSALE展開」の荒れた店頭に上書きされてガッカリしたものでした。
今回訪れるにあたっても、最後のSALEで店頭大荒れなのかな・・・と想像して行きましたが、まったく違いました。
定数定量乱れなし!
春の新商品もキチンと展開!
SALEも美しく展開!
自主売場もテナントショップもVMDしっかり維持!
これがあと1週間余りで閉店する百貨店の店頭とは!!
さすが、ランドスケープを大事にする大人の街のくらしの館だ。
私が訪れた時は比較的空いていましたが、売上は好調とのこと。
私が前職を辞める直前、2017年の11月に恵比寿店は1Fのコスメや雑貨ゾーンをリモデル。VMD計画はチームの面々がかなり頑張ってやってくれていました。リモデル計画の話は随分前からありましたが、強力な事業者との綱引き駆け引きもあったりして計画は紆余曲折右往左往していたような。でも、YGPの街作りコンセプトである「大人・豊かな時間・ランドスケープ」といった要素はブラすことなくリモデル実施。
当時流行り文句だった「新たな定借スキームによる構造改革店舗のモデルケース」を、恵比寿と言う街で大人が豊かな時間をすごせる「上質なサードプレイス」として実行する・・・というような意義だったと記憶しています。
「サードプレイス」という言葉は最近めっきり聞かなくなりましたが、社会学的に都市生活者が必要とする3つの居場所(①家・②職場・③その中間にある場所)の③のことで、社会人なら家と職場の間にカフェとか公園とか、一個人として寛げる居場所が必要!という考え方です。恵比寿三越は恵比寿の街区住人のサードプレイスとしての空間的役割を持とうとしたのです。言葉は違えど、これは開店当初から変わらぬ姿勢でしょうね。
コロナ禍以降、社会人も学生も在宅型の生活に一変したので、①も②も同じ場所、家の自分の部屋が職場や教室じゃん!みたいになっているし、③サードプレイスはネット上の世界だったりお気に入りのSNSやコミュニティが主流であったりもするからややこしいですが、そんな時代だから尚更、リアルな空間でホッとできる、五感を刺激され、寛げる、誰にも邪魔されないサードプレイスというのは必要ですよね。自分のテイストに合う場所。
恵比寿三越は、そういった地域の中での自店の役割とその姿・・を大事にして、お客様にいつもの寛げるお店、ショップ、場としての美しい姿のまま閉じようとしているように見え、店の矜持のようなものを感じました。明日23日からのラストセールでガラっと変わるかもしれませんが・・
店の外装ショーウィンドウは随分前から運用をやめていますが、店内各所で、エスモードジャポンの学生さんの作品をVPのように華々しく展示していました。春の立上りに相応しく、街の感度にも相応しい展示。感心しました。
正面入口では今までなかったライオン像が秘密の社内倉庫(笑)から持ち込まれて展示され、店内ではヒャダイン氏作詞作曲の「えびす顔でさようなら」がBGMとして流れています。こちらは(関係者は)涙なしでは見られないYouTube動画もあり・・
写真室が撮影した、お客様や店スタッフの写真展も胸を打ちます。
自分にはあまり関わりのない店だったけど、やはりさみしい。
最後の店長は私の同期の女性。2003年に伊勢丹メンズ館が出来たとき、1Fのメンズコスメを担当し市場開拓して名を上げた優秀な方。その後のメンズ館8Fリモデル時は私がVMD計画、彼女がフロアマネジャーで、バイヤーも含め喧々諤々、楽しく充実したフロア作りをやった良い思い出があります。思いやりとやさしさと気配りでお店のラストオペレーションを纏めておられることでしょう。お店の皆さんと最後まで明るく頑張ってくださいね。
跡地にはスーパーのライフや明治屋、ドラッグストアのトモズ等が入るようですが・・ライフやトモズはピンとこないな・・