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日本橋高島屋S.C.オープン!

日本橋高島屋S.C.新館オープンしました!
日本橋高島屋S.C.新館オープンしました!

今回は9/25にオープンする日本橋高島屋S.C.の内覧会(9/22土曜日)視察の所見と感想です。

まだ建築溶剤の匂いもかぐわしく、「ボク販売のことわかんないんすよねー」みたいな雑音がたくさん聞こえる初々しい内覧現場に突入!

 

いつの間にか、というかあっという間に聳え立って、いつの間にか完成していた日本橋高島屋の新館。本館、新館、ポケモンセンターの入る東館、そして斜向かいのウォッチメゾンの4館で「日本橋高島屋S.C.」を形成するそう。

印象的には古式ゆかしく座っている本館の横に、図体の大きくギラギラした新館が立っている・・・という感じがしていました。この印象は新館の上に伸びている日本橋高島屋三井ビルディングの背丈によるところが大きいんですけどね。

 

今日家をでるとき、妻が言いました。

「高島屋ショッピングセンターって言うけど、高島屋さんもついにテナントビルになるの??」と。そうだね、と。でも百貨店の高島屋と隣り合って一つの街を形成する感じだと思うよ、と。「百貨店大変だね・・・」と妻。はい。まったくです。

同じ百貨店出身者でもある私の関心事は、新しい新館の中身もさることながら、一つの日本橋高島屋、高島屋として見たときにどんな印象か・・・という点でした。はたしてそれは高島屋なのか??という点。

 

新しい新館に行ってみた感想ですが、

外観からはもっと大きくて広いかと思っていましたが、店内は非常にコンパクトです。面積は小さいのに、広く充実しているように感じられます。建物が大きいのに中身(売場)がコンパクトなのは、オフィスやバックヤードが結構な面積を占めているためですが、それだけではなく、中央のエスカレータから通じるメイン回遊通路を極力短くシンプルにし、エスカレータと各ショップとの距離を近づけ、ショップの奥行を深くしているからフロアがコンパクトに感じられるのですね。
レストランもそうですが、各ショップの壁構築も抑えられていて開口がとても広く取られていますのでフロアの一体感があり 、各ショップの商品も回遊通路からよ~く見えます。

 

最近多いのは、GSIXや日比谷ミッドタウンのように中央吹き抜けの周りをグルグル歩かされるパターン。NEWOMANのように建物構造が複雑でフロアごとに地型が変わり非効率に歩かされるパターン。こういう店創りを散々見ているので、効率よく距離感の近い、実にヒューマンスケールで気持ちのよいサイズ感の店として認識されます。

加えてエスカ前のショップは特に什器高もおさえ目でフロア内の見通しが非常に良いです。

 

館としてのショップラインナップは、テイストの軸が絶妙に通っていて、肩ひじ張りすぎず、とんがりすぎず、適度に上質でライフスタイルの特徴が滲み出る構成です。これが新しい日本橋スタイルでしょうか。内装デザインの面でもコレドのように和を意識しているわけでもないし、周辺の商業施設と差別化しつつもフロアごとにパブリックデザインと照明明度を変えて印象を切り変えています。


パブリックスペースのデザインが強いこともあり、各ショップのファサードの規制は苦労を感じます。ショップサインの高さや、特に5階は側面ショップにボーダーや欄間の高さを極力揃えさせてフロアのテイストを醸成させていく過程を感じますね。
総合的に、各ショップのカラー、デザインの出させかたはとても上手いです!パブリックデザインとショップデザインが平衡しているんですね。館の特徴をよく理解し、スターバックスも毎度のことながらデザインを変えてきていますよ!


建物が通りに面していますが、外光を極力取り込むよう配慮されています。
また、ショップラインナップとその品揃えにおける雑貨の混ぜ方とバランスは非常に参考になるでしょう。
各ショップが自分達のやり方のみならず、館としての見せ場と見せ方として自分達の役割を心得ているようです。ですから、館としてのビジュアルプレゼンテーションの場はありませんが、その役割を各ショップがしっかり演じてくれています。ショップさんにはそんなつもりはないでしょうけど、自店のVMDをしっかり構築できていますから、それが結果として「館のため」になっているんですね。

 

7階からは屋上庭園(日本橋グリーンテラス)に行けます。まだ完成していません。春オープンだそうです。この屋上庭園へつながる連絡通路を中心に、レストランの外周をオープンな通路が取り囲んでいます。ビストロやBARの中がパブリック通路から見えるんですよ。これがとてもイイ雰囲気です。BARはVMDもサイコーですよ。内覧なだけに、レストラン内のまだ練習モードのところが見えてしまったりするのもまた一興でした。

事前に予習されている方は誰もが注目していたであろう、かもめブックス、梟書茶房、 歌舞伎町ブックセンターなどで知られる株式会社鴎来堂が新業態として出店した「本棚を売るショップ」、ハミングバードブックシェルフ。本棚を売る??どういうこと??

単品の本棚(箱)一つ一つに、テーマが設定されています。そのテーマにあった本が数冊、編集されて一つの本棚が完成されているんです。例えば「初めてのSF」というテーマで文庫が数冊。大好きな「星を継ぐもの」が入っていたりして共感してしまいます(笑)

本の合計金額+箱代で本棚がひとつ買えるというわけです。箱代は1200円から1500円だそうです。箱だけも別売りで買えます。

BACHの幅さんが「選書」という括りを作って以降の数年、本売場はずいぶん変わりました。主体的に、編集の妙が現れるようになりました。でも、このやり方で店舗はどれだけ売上るのでしょう。革新的な取り組みですが、ビジネスとしてのからくりがどうなっているのかヒジョーに関心が湧きます。

 

このショップは、決して大きくないショップの中で、中央に確固たるスタイル提案の場が低いステージ上に形成されています。熱心に店員の説明に耳を傾けていた老夫婦がおられましたが、奥様が後ろにあるステージに気付いておらず足を引っかけてステージ上に倒れてしまいました。売場内への「段上げ」はお客様の安全上、最大限の注意を払うべきものですが、払いすぎればショップデザインの面白みは減ってしまいます。以前勤めていた会社では最大限以上に注意を払っていたので、このようなシーンを目の当たりにすると安全性とデザインのバランスについて初心に返って考えさせられてしまいます。

 

総じて、各ショップの気合いの入った陳列とVMDはすべて大変見ごたえあります!テーマを帯びたVP。ラックの編集コーディネイト。テーブル上の雑貨の陳列構築。壁面上部PPの見事な構成。効果的なモチーフ使い。展開におけるマグネットカラーの配置。適切な商品量。余計なPOPやサインがなく、まだ商品も欠けていませんから実に高い精度です。やはりトゥモローランドには展開の凄さを思い知らされます。ハウスオブロータス、ルコックスポルティフ、コレックス、エブール・・・美しいです。総合的に見て展開に美観の伴わないテナントがほぼゼロなのであまり心配ありませんが、展開及びVMDはなるべく早いうちに、よい状態のうちにチェックしてください。VMDの観点では、いずれ少なからずVMD精度が維持されている店とされていない店の差が出てきてしまいますから。特に1F玄関前の「日本市」売場は展開が崩れないよう祈ってしまいます。

 

日本橋ではコレドもオープンして随分経ちましたが、店頭展開はきれいに維持されています。でも、オペレーション上仕方ないのですが、レストラン前のメニュー看板林立やショップ内POPの乱立など、オープン当初にはなかったものがたくさん出ています。これはダメなのではありません。

今回オープンする高島屋の新館も、いずれ同様の状態になります。でも今はまだなっていません。最もコンセプチュアルでベストな素の状態です。この状態のうちに是非店頭を視察されることをおススメします。

 

では、本館はどうかしら。

 

 

新館から本館に渡ったときの、本館の柔らかなオーセンティックなムードが心地よいですね。本館のアイデンティティとムードを対比的に感じることができます。新館のディーン&デルーカ脇の玄関から、ガレリアを横切って本館に入ってみるとよいでしょう。ガレリアは明るく広く、見通し良く大変気持ちのいいアーケードです。ポールスミスが効いてます!

 

本館は一部リモデルしてアップデートされていますが、上層階(特にリビング・ベビー子供関係)は旧態のままですので、残念ながらひとつの「日本橋高島屋」という傘のなかに新旧業態の明暗が視覚的にも見えてきてしまいます。リモデルオープン時あれだけ素晴らしかった呉服ゾーンもいまやもう・・・

 

新館は確かに素晴らしいけど、別に「高島屋」っていうキャラクターの館ではない(看板が付いてなければ高島屋がやっているとは判らない)から、高島屋としての一体化した何か・・が無くて悲しいような気もします。無論、特性と役割が異なる館がいくつか集まっているので計画通りではあるのです。が、百貨店はツラいよというのが見えてしまいます。百貨店のテナントビル化は百貨店の存在意義、百貨店の良心、百貨店の提案、展開とは何か・・を突き付けてきます。


リモデルした3F婦人靴と4F婦人肌着、特に婦人靴はきちんと見ておきましょう。国内外の競合店がよく研究され、婦人靴展開手法の博覧会で総まとめの様相です。靴も肌着も陳列が大味でちょいと残念。

4Fエターナルセレクション(ブランドコーナー編集)ゾーンのエスカ回りの気持ち悪さも必見。え!?どうなってるのここ!!?という感じ。気持ち悪さの謎はストアガイドのフロア図面を見ると解けます。

 

個々の話はさておき、新館がここまで生まれ変わったのですから本館、特に上層のリモデルしていないフロアも相応に展開の手入れをしておくべきではなかったかと思います。あくまでも「百貨店である本館」を本当のフラッグシップたる展開精度に仕上げていかれることを願います。

 

日本橋地域の他のSCや百貨店とも一体化した街づくりの中で、この4館一体化の開発は一定以上の役割を果たすでしょう。これまでこの周辺にはインバウンドの波もあまり見られなかったので、東京駅とのつながりも含め活性化されることでしょう。ただ、最近相次いでオープンした大型商業施設と比べると集客する場としての印象はどうしても地味ですので、エリアとしてお向かいの丸善にも一肌脱いでもらって頑張ってほしいところです。三越も大丸もがんばれ!!